インタビュー

2020-12-21 09:45

研究系スタートアップの創業期に、”自分たちが貢献できる事”

Co-founders Interview-働きながらスタートアップ創出体験

研究系スタートアップの創業期に、”自分たちが貢献できる事”


Beyond Next Venturesが提供する、国内トップの研究者と共にスタートアップを創る、

起業家/社内起業家育成プログラム(Innovation Leaders Program)は、未来の起業家・社内起業家を育成する取り組みです。

今回は、第7期(2020/09~)に参加をされた、参加者2名のインタビュー記事を実施。
技術バックグラウンドではないお二人が、研究者と2カ月間の事業創出を経験する中で感じたこととは?

<今回インタビューにご協力頂いた方>

  

東京海上日動火災保険株式会社

尾崎護 氏 

  

外資系医療機器メーカー

濱尾康一 氏  

今回のプログラム(7期)では、どんな研究の事業化に取り組みましたか。


尾崎さん(以下、尾崎)

私は、大学研究者の方が中心となっている、創業期のAIスタートアップに参加しました。

コストや消費電力の高さなどAIの社会実装を阻んでいる原因を解決する独自技術を持つチームです。

その研究成果を使い、後継者不足や危険が伴う工場運営上の問題などを解決し、

安全安心な社会の実現を目指すビジョンを持っていました。


私の行動する上での判断軸の1つが「社会的な意義」なので、プレゼンで事業コンセプトを聞いた時から

この企業に必ず参加したいと思っていました。そのような領域には仕専的にも知見がほとんどなかったのですが、

社会的意義の大きさに惹かれて同社に参加を決めました。


チームの中では、ビジネスモデルの作成や営業販売戦略の立案といった役割を中心に担当しました。


濱尾さん(以下、濱尾)

私は自分が活躍できるイメージが最も沸いたチームを選びました。

私が参加したのは、大学所属の医師が中心になって耳鼻科領域のプロダクトを作っているチームです。

耳鳴りや難聴を治すプロダクトの事業化を目指していました。


現職で私は、眼科領域の製品を担当していたため、産業構造や流通経路などをある程度理解していましたし、

この分野にニーズがあることも知っていました。

そういった事前知識を活かし、プログラム中は営業戦略やビジネスモデルのブラッシュアップを受け持ちました。


ただ加入した当初は、チームには創業者の方と言語聴覚士の方しかメンバーがいなかったので、1つの役割

だけではなく、プログラム参加の同期と共に、臨機応変に色々な役割をすることが多かったです。


普段働かれている環境とは、規模含め大きく異なりますね。


尾崎

働き方や意思決定のスピードなど、驚くポイントは多かったです。

特に1人1人がこなす業務の幅には驚きました。


普段働いている環境では人によって部署や担当が決まっています。

ですが、今回のチームは全員で数名しかいないので、

社長が自ら資金調達の資料作成から採用計画の立案、営業まで全てこなしていました。


参加前から業務範囲の広さは想像していましたが、それをはるかに上回っていました。

それに加えて一瞬で判断して物事を進めていくスピードも求められるので、

最初のうちはついていくのが大変でした。 


ただそういった精神的にも身体的にも大変な環境にも関わらず、働いている人が楽しそうなんですよね。

毎週1回行うミーティングのたびに、進捗報告や直面している課題を熱く話している姿が印象的でした。


そういった光景は、なかなか大企業の中では見られない部分ではないでしょうか。


濱尾

そもそもスタートアップはまだない市場を作るので、マーケットのデータもない場合がほとんどです。

また、複数人でチェックをしながら物事を決めていく大企業とは異なり、一人一人が意思決定者、承認者

にならないといけない場面が少なくありません。

その環境の中で、意思決定をスピード感持って進める面白さと怖さを肌で感じられました。


参加したから分かった“本当の”スタートアップのリアル


実際の事業創りを経験して、最も良かった点は何ですか。


濱尾

本当の意味で、スタートアップのリアルを知ることができたことじゃないでしょうか。

今まで経営者の講演会などは聞いてきた方ですが、講演できる時点でその人はすでに一定成功しているので、

話す内容は似てきてしまいます。


極端にいうと、どの方も「事業を起こし、苦戦・失敗を経て、結果再起しました」

といった話になっているじゃないですか。最終的に成功したエピソードがほとんどです。


一方でこのプログラムは、その結果が出る前の、まさに最中にある人達と時間を共にすることができます。

もし新しい事業を自分で起こしたり、関わったりしたいのであれば、

学ぶべきはまさに今事業を作っている過程の泥臭い失敗や取り組みだと思います。


起業家の人と一緒にそういった現在進行形の形で、リアルな体験ができるのは、講演会とは全く異なりますし、

このプログラムの非常に魅力的な点ですよね。


また、関わっている事業がユーザーにどのように役立っているかを目の前で感じられるのも貴重な経験でした。

参加期間中、研究チームの所属する病院まで行って、プロダクトを使って耳が聴こえるようになった患者さんや

病気の原因がわかった時の患者さんの反応を見る機会があって。


目の前で自分が関わっている商品が課題を解決している瞬間は、日頃の業務の中では経験をしたことがほとんど

なかったので新鮮でしたし、それによってコミット度合いが一気に変わりましたね。



尾崎

起業家の生々しいリアルを感じられるのは本当に魅力的ですよね。

参加前まで、起業家の人はなんでもできるスーパーマンのような人を想像していました。


テレビでも、起業家というと元コンサルの方だったり、事業づくりのプロが出てくることが多いですよね。

しかし、実際にプログラムを通して起業家の方に会ってみると、全員がそういった方である必要はないとわかりました。


例えば私がご一緒したチームの経営者は、事業のアイディアを考える点で非常に優れていて、

サービスの世界観や技術的な優位性を考える点で、際立って高い能力をもっていました。

直感的にこのアイディアが世の中に刺さるかが分かる方でした。


一方で、そのアイディアをどのような仕組みで売って社会実装していくかについては、初の挑戦です。

この部分こそ、日頃から売る仕組みや売り方を考えている私たちが力になれるんじゃないかと思えました。


 濱尾

このプログラムは、研究領域を対象にしているため、研究面での確かさ、そしてアイディアの発想力が際立っている経営者(または研究者)が多いです。

だからこそ、私たちのようにビジネスの仕組み化に日々取り組んでいるメンバーは貢献しやすいと感じました。


例えば、自分が日頃業務で培ってきた「誰の何の課題を解決するのか」を考えることが、

起業家の方の事業アイディアを客観的に見てブラッシュアップする際に思いのほか感謝されたりします。


参加した当初は、自分の業務スキルが役立つ想像があまりできませんでしたが、参加して活かせる部分があると知れたのも、

話を聞くだけでなく事業をつくっている過程に実際に参加できたからだと思います。


今ある当たり前が、”当たり前じゃない”と知った日


なぜ研究領域のスタートアップづくりに参加を?

尾崎

私は、過去の仕事の中で、スタートアップとの事業協力から出資まで担当した際にとても刺激を受けた経験から、

スタートアップに関われるチャンスがあったら挑戦しよう!と考えていました。


また自分が、今できること、できないことをきちんと理解しておきたいと思ったのも参加のきっかけです。


というのも1年半前に、足の病気にかかり運動が突然できなくなる出来事がありました。

それまで週末も大好きなサッカーをしたり 、ロードバイクで遠出したりと、プライベートでも積極的に運動をしていましたが、

ある日突然、一切できなくなってしまいました。


それまで病気で好きなことが突然できなくなるといった話はどこか遠い話でしたが、身をもってその意味を理解したのです。

まったく予想もしていないタイミングで、こういうことって起こるんだなと。


当たり前を突然奪われる経験をして、自分が人生を通してやりたいことや挑戦したいことについて改めて深く考えたのです。

人生一度切り、やりたいことをできるうちに挑戦して、後悔しないように生きたい、そのために今何をすべきか考えました。


その1つが、自分で事業をつくることです。

しかし同時に、それを実行するには自分の実力がどの程度なのか知る必要があるのではないかと考えたのです。

どの程度今の自分が通用するのかが分からないと、次の一歩を踏み出せないぞと。

そういった中で、実際にスタートアップの世界に一歩踏み出して、試せる環境としてこのプログラムに応募をしました。


濱尾

大企業にいると今の事業を数パーセント大きくすることに大人数で取り組みますので、結果として

世の中に影響を与えられていることを感じられる瞬間は少ないですし、自分の実力も測りにくいと思います。

その結果、多くの人が「大企業ではやりたいことができない」という理由で辞めていきますよね。


私も自分でアイディアを形にしたかったので、会社を出て挑戦する必要があるんじゃないかと思っていました。

しかし辞める前に、本当に大企業の中ではできないのか、チャレンジしてみたからでも遅くないなと考えたのです。

そこで今年1月からコミュニティを社内で立ち上げ、アイディアや熱意を持った人同士繋がる場を当時の社長に予算を貰って始めました。 


しかし今年4月にサポートいただいていた社長が他界してしまって。

社長も研究開発出身だったので、コミュニティを始めるにあたり

「違う分野の仲間が集まり、お互いイノベーションを起こせるように競争しましょう」と話していたのですが、それも叶わずじまいでした。

尾崎さんもおしゃっていた通り、「人生はいつ何が起きても不思議ではない」ということを最後に教えられたわけです。

 

その経験を経て、社内でつながるだけではなく、一歩踏み込んだ取り組みを探す中でプログラムに出会いました。


大企業では経験できないこと、リアルな事業の裏側を見られることが魅力だったと。


尾崎

そうですね、創業期の激動を経験できたのは、大きかったです。

実際に参加をしてみて、どの参加チームも、本当に熱い想いをもって挑戦されている方が多いと感じました。

その方達の想いを世の中で実現する手伝いができる。

そして、想いに共感してチャレンジするのが好きな方には、楽しい体験だと思います。


私も最初に参加チームのプレゼンを聞いた段階では、何が課題でどうやって解決できるのかはよく分からなかったです。

ただ、創業者の熱い想いが伝わってきたので、全く専門外のAI企業への参加を決めました 笑


社内だと経験できない「尖り」の重要性


スタートアップ創りの経験は、どのような点で現在の業務に活かせていますか


尾崎

自分の想いや理想を信じて社会課題に挑戦している人と働けたことで、チャレンジに対して前向きになれました。


また事業を作るには、何をすべきかが以前よりも明確に描けるようになりました。

私も2年程前に自社内の若手有志団体に参画し、今も完全業務時間外に新規事業の立案などを

仕事と同時並行で行っています。その取り組みでも、自分が経験した事業を作る過程をトレースする

イメージで、やるべきことを洗い出していくようにしています。


濱尾

以前より、思考やフレームワークの偏りに注意するようになりました。

プログラム期間中、会社も専門も異なるバックグラウンドを持つメンバーと働いていたので、

会社でいつも使っている共通言語やフレームワークが通じない、機能しないことに気付かされる機会が多かったです。


あとはいい意味で「角を立たせないと社会は変えられない」と実感できました。

今の会社で私は戦略を描く仕事をしていますが、どんなに斬新な戦略を最初に書いても

大企業では関わるステークホルダーが多い分、最終的に丸く角が立たないものになってしまいがちです。


ただそれでは世界は変えられないと思うのです。

なぜなら角が立たないということは、誰しもにとって「そこそこ良い戦略」でしかないから。

強烈に誰かに刺さり、爆発的な熱狂を生むようなベストな戦略ではありません。


スタートアップの中で働けたことで、世の中を変えるには時には誰かの利益が損なわれても、

自分達が笑顔にしたいユーザーに価値を届けることが求められることを知りました。

前例がない、非難されるかもしれない」状況でも、挑むことが社会を変えることなんだと、

実体験として知れたのは大きいです。


大企業にいて、角の立つ戦略を立てるのは容易ではありません。

ですが、本当に社会を変えたいのであればその姿勢が求められることは、参加しなければ知ることができませんでした。


これから参加される方に一言お願いします


尾崎

何を得たいかの「具体的な目的」を持って参加することが大事です。

本気さをもって挑めば、チームも必ず応えてくれますし、プログラム中の中での学びや経験から、

目的に向けてヒントや答えが得られることでしょう。

目的意識さえ持っていればマイナスに転ぶことはないので、チャレンジしたいけど、

自分の実力や覚悟に不安を覚えている方は、ぜひ勇気持って挑んでみてください。


濱尾

尾崎さんのコメントに付け加えるとすると、ネクストキャリアに悩む若手には、

選択肢を広げる手段として挑戦して欲しいです。

どうしても社内だけでは上の役職に上がっていくほどポジションが少なくなり、停滞感も感じやすくなります。

どんなにスペシャリストで能力が高くても、それは会社の仕組み上仕方ありません。


そんな現状に不満や不安を感じている人は、ぜひ参加して欲しいです。

外の環境で自分の実力や能力を知ることで、それまで気づけなかったスキルや働く目的が見つかることを願っています。


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Co-foundersは、国内最大級のテクノロジー領域のアクセラレーター Beyond Next Ventures株式会社 が運営をしています。

同サービスブランドを通じて、テック領域の起業家・社内起業家育成メディアと人材開発サービスを提供しています。



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